女性スタッフが多いクリニックにとって、出産などのライフイベントによる離職はつきものです。
どのクリニックでも起こりうる産休・育休からの離職ですが、離職率はクリニックによって大きな差があります。
離職率が低いクリニックにするには、どうしたら良いのか。
ご紹介していきます。
目次
産休取得前後の社内状況
業種は違いますが、株式会社まるで産休によりスタッフが減ったときの会社の状況を一例としてご紹介します。
でも1番しんどいのは、やっぱりお母さん(産休スタッフ)だと思います。
うちの場合、共同経営をしている奥さんのつわりがひどくて動けなくなってしまった時期がありました。会社のことも家のことも、いかに頼りきっていたかが分かって、すごく反省しました。自分の余裕がなくなってしまって、奥さんに不安な思いをさせてしまったことも。
「仕事と育児の両立を目指す」とは言っていたけど、どれだけ大変なことか身をもって体験しました。
そんな中でも、日数の少ないパートさんができる範囲で仕事を引き取ってくれたり、職種の垣根を越えてフォローしてくれたりと、皆にたくさん助けられたという印象が強くあります。
産休スタッフへも復帰しやすいような環境作りも並行して行っていました。
産休スタッフへのはたらきかけ
あくまで、復帰してくれるという前提ですべて考えるようにしていました。でもお休み中にこちらからアクションを頻繁に起こすことに対しては、気が引ける部分もあります。そんな時、産休中のメンバーが自発的にzoomで朝礼へ参加してくれたのは、本当に嬉しかったです。
医療機関においても、zoom等を使えば、院に出勤することもなく朝礼や隙間時間でコミュニケーションを取ることも可能です。このコミュニケーション一つでだいぶ心理的負担はなくなると思います。
ただし、あくまで子育てに専念しなければならない期間であるため、強制的に参加させることはNGです。自発的に参加したくなるような雰囲気・関係作りが必要といえます。
それは産休後、離職してしまう理由につながっています。
復帰が難しい理由
「復帰する前提で、社内状況を共有する」とお伝えしましたが、なぜこれが大切なのか。
その理由は、休業中に会社との接触がないため、復帰の自信を失くし、退職の道を選ぶ女性の多いことが調査によって判明しているからです。(図:参照)
一方、育休の取得期間が長くても、復帰後に希望通りの仕事ができている人の会社では、休業前に「休業利用時の会社からのフォロー体制についての説明」「復帰にあたっての相談」などの話し合いが行われている割合が高いことも分かりました。
せっかく育ったスタッフが離れてしまうことは、医療機関にとって大きな損失です。残ってもらうためには、休業者へのフォローや両立支援への取組が重要だと思います。
では、具体的にどうしていけばよいか。
産休後の復帰に合わせた環境作り
産休復帰しやすい雰囲気作り
まず大切なのが、戻ってきやすい空気をつくること。
一部の企業では、「産休明けの人は戦力にならない」「子どもの都合で休むだろう」という考えが残っており、他の人員で仕事を進めようとするケースもあります。
そうすると、無意識のうちに心理的な障壁ができるので、育休明けの人が戻りにくくなってしまう。全員が「おかえりなさい」と笑って言えるような雰囲気づくりが必要ですね。
復帰する前提での戦略を
休職者復帰後の戦略を考えておくこと。先程も述べたとおり多くの企業では、「復帰してくれるか分からないから、とりあえず今いるメンバーで回せるようにしておこう」と、計画を立てがちです。
いざ戻ってきてくれたときに「仕事がない!」という状況ができてしまいます。スタッフからすると仕事ないというのは、とても恐ろしい状況です。
戻ってきてくれるという想定で計画を立てておくと、すぐに役割や場所を与えられるので、復帰した人に安心感を与えることができます。
決して、産休に入ったスタッフ抜きで考えないことが大切ですね。そのためにも、日ごろから丁寧にコミュニケーションをとっておく必要があると思います。
離職率を下げる動きは採用前から
これまでお伝えしてきたとおり、産休が決まってからできることというのは実は少ないのです。産休に限らず、長く働ける環境づくりというのは採用前から始まっています。
実際に株式会社まるで実施した取り組みを一部、ご紹介します。
採用前
●会社の方針を示す
経営指針をはじめ、株式会社まるが目指すところや何を大事にしているのか、どんな会社にしていきたいかといった想いを伝えます。それに対しての求職者の方の考えもしっかりと聴いて、お互いにマッチングするかを重視しています。
●会社のありのままを知ってもらう
人員構成・課題・会社の売上や人件費数値など、ありのままの会社の状態を伝えることを意識しています。
求職者を集めたいがために会社のことを脚色してしまうと、入社後に「あれ?話に聞いていたのと違う!」といったように、ギャップが生じることで離職につながってしまうこともあるからです。
採用後
●スタッフに任せる
スタッフの意見や判断が会社の方針から反れない限りは、スタッフに判断を委ねるようにしています。そして、たくさんの試行錯誤と失敗をしてもらっています。それが個々、そして会社の成長につながると思っています。
●経営者の“我”を捨てる
医療機関で人が定着しない場合に考えられるのが、スタッフに対しての院長の理解が不足しているケースです。
状況を顧みずに指示を出すばかりだったり、コミュニケーションを疎かにしていたり…。
スタッフの想いを受け取れる先生は、経営もうまくいっています。院長の器の大きさが院を変えると言っても、過言ではありません。
患者ファーストの落とし穴
離職が続く、スタッフが定着しない…そんな医療機関こそこんな方針を掲げていることが多いです。
患者ファースト=スタッフワースト!?
患者さんの目線を大切にした医療の提供は、間違いなく素晴らしいことです。私もそういう医院に診てもらいたいと思います。
しかし、患者ファーストが先行し、スタッフのことを全く考えていないケースがよく見受けられます。
医療に従事する人は、「貢献したい」という気持ちを強く持つ人が多いです。初めは自分を犠牲にしながらでも患者さんのために働いてくれますが、満たされない状況が続くと、耐え切れずに退職していってしまうことが多いです。
「スタッフが医院に不満を持っている状態」では、結局、患者さんは大切にできません。
「この医院のために何かしたい」とスタッフが思える状態でないと、医院経営は停滞していきます。
経営者は、患者さんと同時にスタッフも大切にする必要があります。
定着率が高いクリニックの共通点
女性の定着率が高い医療機関に共通しているのは、院長が女性スタッフの変化や悩みに対して心配りができていることです。
意外と思う方も多いのではないでしょうか。
女性は声かけひとつでもそうですし、ちゃんと話を聴いてくれているかどうかも、しっかり見ています。
院長だけでフォローが難しい場合でも、うまくいっている医療機関もあります。院長が気づけない部分を上手にサポートしてくれる奥様であったり、リーダーであったりそういう人が必ずいます。
いずれにしても大切なのは、院長がきちんとスタッフの気持ちを受け取っていて、スタッフが受け取ってくれていると感じられる”関係性”です。いくら進言を受けても、院長が「我関せず!」という態度であれば成り立ちません。
そんなことで変わるわけない・・と思っている院長も騙されたと思って、一定期間声掛けを頑張ってみてください。
試す価値は絶対にあります。
そして経営者はスタッフに与えるだけではなく、スタッフから得られているものも確実にあります。
定着率が高い=採用時に強いだけではない
採用面では、定着率の高さを魅力に感じてもらえる。また、人が人を呼ぶ状態になること。長く働いてくれる人が楽しそうであればあるほど、「この会社で働きたい」という人も増えていきますよね。
更に、スキルや経験を重ねたスタッフがいることで、実務がスムーズになり経営が安定します。
これが離職1人につき500万円の損失といわれる所以ともいえるところです。
中間管理職が1人いるか、いないかで仕事の進み具合は驚くほどに異なります。
そのためにも、離職率を下げマネジメントできるようなスタッフを育てることは最優先事項といえるでしょう。
休業取得実績を活かした株式会社まるのサポート
実際に、産休や育休を取得したスタッフがいるという実績を活かし、こんなお手伝いをさせていただくことができます。
1.方向性の明確化
院長が「これから先、どういう院にしていきたいのか?」「スタッフさんとどう歩んでいきたいのか?」を明文化します。院の方向性が定まると、自ずと方針も見えてきます。
2.制度策定のフォロー
産休や育休の取得実績がなく、何から始めていいのか分からない…という場合でも大丈夫です。クリニックの現状から必要事項を洗い出し、マニュアル化するお手伝いをしています。
3.研修の実施
子供がいるメンバーと独身メンバーが相互理解できるようなグループワークなどを実施しています。
4.スタッフ面談のフォロー
休業前後の面談は必須です。異性では聴きにくいことも、まるスタッフが同席して、フォローさせていただきます。自社で実践したノウハウを活用して、医療機関のお困りごとにも対応していきます。
まとめ
ライフイベントを大切にしながら働くことができる職場環境を整えられれば、例え高時給でなくても、すごく忙しくて大変なクリニックであっても定着率低下を防ぐことができます。
どうすれば働きやすくなるか直接スタッフに聞いてみるのも一つの手です。
スタッフが産休後も働きたいと思えるような環境か、見直してみてはいかがでしょうか。
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